準を、全体として考へる場合、僕は地域的に都会に文化が集中して、田舎には文化が浸潤してゐないといふ考へ方を、大雑把には信用しないのです。或る場合には田舎の方に却つて水準の高い文化の遺産があつて、そこを離れた、近代化した都会のなかで、さういふものが亡びてゐるやうなことも考へられるのです。たゞしかし、文化の地域的偏在といふことも亦いろいろな意味で云へると思ふ。僕は、それぞれの地域が、それぞれの優れた文化をもつてゐる状態が一番理想的と思ふのです。一国の文化政策としても、或は国民のそれぞれの社会的関心といふ点から云つても、さういふ方向に向つて努力しなければならんと思ふ。たゞ今後の健全な文化とは一つは生産面に於る文化、もう一つは生活から遊離したところに発展したものでなく、本当に生活に根を下した、生活現象の発展としての文化でなければならぬ、といふ、二つのことが云へると思ふ。日常生活のなかにその人間の文化性、或は文化的価値を見ることが、今まで比較的少なかつた。今までと云つても、極く最近、明治の末期頃から一層さうなつたので、例へば一人の甲といふ人間を考へた場合、政治家なら政治、学者なら学問といふ、その専
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