るといふことです。たゞその場合、一方の認識が足りないために、健全なものも少なからずその巻き添へを喰つてゐるといふことです。そこでこの不健全なものと健全なものとは完全に区別できるのだといふ希望が与へられなければ、どうもわれわれは仕事ができにくい。文化の全面に亘つて本当に圧迫を受けてゐるんだつたら、われわれは時代と戦ふより外はないわけです。それではかういふ時代に希望をもつといふことはとてもできない。若しさうであれば公然とそれを云ふべきだ。然るに不健全なものがあつて、それに繋つてをる健全な部分が巻き添へを喰つてゐるのであれば、常に希望を失はずに寧ろ今までの不健全なものを克服するための努力を傾倒しなければならない。さういふ風に起ち上らなければ、一緒に巻き込まれて犠牲になつてしまふ。やはり今までの不健全なものと絶縁するといふ態度で行かねば、これからの健全な文化は作つて行けないのではないかと思ふのです。僕が今度こんな仕事を引受ける気になつたのも、考へがさういふ風に向つてをつたからだと思ふのです。

     私生活面の文化

 一般的に極く広い意味に於る文化を考へる場合、即ち文化の時代性、文化の水
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