番人間の言葉としては、力強いものになり得るんだ。政治家でも役人でも、いゝ意味で普遍性をもたせるといふことをはつきり自覚して貰ひたいと思ふのです。いゝ作家はやはりさういふことを心がけてゐる。思想の深さはさういふところから来るのではないでせうか。非常に教養といふものを狭く考へて、今日のやうな時代では、わかるといふことが、何かそれだけで非常に浅いやうに考へる傾向があるんぢやないかと思ふ。さうぢやなくて、わからせるといふことは、ものを書く人間の非常な力であつて、それがわかるやうに書かれてあつたからといつて、わかつた人間の力であると思ふのは間違ひだ。普遍性をもつといふことは、俗衆とか愚衆とか云はれる種類の大衆に受容れられることぢやない。さういふ大衆は、本当にものを読んでわかるんでなくて、知つてゐることを云はれるのを一番楽しむんだ。
国民各層や或は多くの社会に於る摩擦の原因の多くは、さういふところにあると思ふんだ。つまらんことが理由で、一緒に仕事ができるものまでできなくなる。あまりこれが多過ぎるのです。
役割と責任
今日、国民全体が協力しなければならんといふことは、ちやんと理窟で
前へ
次へ
全24ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング