と思ふ。であるからこそ、政治に文化性を与へる役割は、知識層がこれを引受けなければならないし、さうすることによつて、政治を民衆に近づけ、民衆を本当に動かす力を政治にもたせるやうに、われわれは努めなければならんのです。
政府から出る公文書や声明書でも、考慮の仕方によつてはもつと大衆に近づき、もつと大衆の心に訴へさうなものがあるんぢやないかと思ひます。何とかもつとうまく云つて貰ひたいと思ふことがよくあるのだが、なかなかむづかしい。当局に注意したいんだが、向うには通じない。文章の巧拙などの問題でなく、そこに何が足りないかといふことを、本当にはつきり指摘して、訂正して貰はなければならんことですが、それは今度みたいな仕事をしてをれば、云ふ機会もあるし、云はうといふ意志もあるが、なかなかにむづかしいことです。
その人でなければ云へないことを、みんな省いてしまふ。さうして誰が云つても間違ひのないことだけが残る。さうして出来上つたものが非常に間違ひないことは事実であるかも知れないが、何か一つの力が抜けてしまふ。然るに個人や民間でものを云つたり、書いたりする場合にはさういふことが全然ないから、それが一
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