、臣道といふことが云はれてゐる。日本国民の道といふこともそれと同じだ。立派な日本国民になるといふのはどういふことだといふことを、もつとはつきりさせねば、教育の根本は始終ぐらつかなければならん。
 学校教育と関連して、一般青少年の理想だが、これも今までのやうな考へ方から変へて行かなければいかん。今まで、偉い人間といふのは、なんとなく勲章を沢山つけた人とか、自動車を乗り廻す人とかいふ風に考へられがちだつた。立身出世主義をみんなの力で取除くことだ。さういふ社会的の立身出世でなく、社会がかういふ人を尊敬してゐる、またさういふ人の仕事は、社会的に名誉を以て報いられると同時に、物質的にも酬いられるといふことを、はつきり知らせる運動を起すべきだと考へます。名誉がいろいろな形に現れて来るから、やはり不純なものになる。大きな家にでも住んでゐれば、それが何か名誉のやうな錯覚が、民衆の頭に沁み込んでゐるからいけない。一方から云ふと、不名誉にもならないやうなことが、不名誉扱ひを受けてゐたりする。この社会の通念を矯正して行くためには、ジャーナリズムなど与つて力があると思ふ。
 明治以来の、いはゆる誰でも偉くなれ
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