るといふ気運が、これを作つてしまつたんでせう。ところが誰でも偉くなれるといふ気運は一時の傾向で、さういふ情勢を遥かに超えてゐても、まだその気分だけが抜けず、足掻きを続けてゐるといふ現状です。誰だつて政治家にもなれ、軍人にもなれることは間違ひないけれど、さういふ社会的の地位だけが出世の目標であつてはならないのです。一勤労者が公のために、目立たないがこれだけの仕事をしてゐるといふことを少くとも知つてゐる人間が敬意を表して、その人に頭を下げるといふ気運が、どうしても出て来るべきでせう。どうも今までは、人間性といふものに対する、本当の教育の根本がなかつたのです。お互にあの人は立派な人だといふ標準が、もつと変つて来ねばいけない。
教育と政治と結びつき、多少極端な方針がそこに加つて来ると、立派な国民であれば立派な人間でなくてもいゝといふやうな、殆ど考へられないやうな方向に逸れて行くことがある。
新しい時代の日本人の形といふものは、作家には興味のあるものですが、何か作品で、さういふものを捜してゐる人はゐませんか。新しい日本人の型といふ問題を……。
こなひだも云つたが、形は旧くてもいゝが、日本人
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