さつきの椅子にかける。
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男 新聞を拝借してゐます。
夫人 よろしいんですの。
るい 奥さま、わたくし、今日は、まつたく、どうかしてゐるんでございますね。さつき、あんなお喋《しやべ》りをしたからでございませうか……。なんですか、胸騒ぎがしてしやうがございません。それに、かう肥《ふと》つてをりますと、何時《いつ》なんどき、心臓をやられるかわからないつて、お医者様もおつしやいましてすから……。
夫人 気をつけた方がいゝわ、あんまり思ひつめるのがよくないんだわ……。
るい はい、それはもうわかつてをります。ですから、近頃は、なにも考へませんのです。からだもなるだけ使ひません。かうして、楽な仕事ばかりさせていたゞいてては済まないんでございますけれど……。
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九時が鳴る。るいは、レコードを外《はづ》す。彼女は、夫人と、男に、恭しく会釈をしてその場を去らうとする。
男、それを見送る。
夫人は、ぢつと、二人の様子をみてゐる。
食堂の燈火《あかり》が消える。
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