方の一般民衆の生活に良い一つの文化的の栄養を与へる。これが第二の目的であります。唯地方の文化の遺産を特殊な人が独占して、特殊な人がそれを誇りにして居るといふことではいけないので、さういふものがあればその地方の人達がさういふ文化を自分の身に附けて、さういふ文化を十分誇りとし得るやうな、さういふ一つの方法が講ぜられなければならぬと思つて居ります。地方の文化団体はさういふ意味に於て、所謂地方の文化人が唯自慰的に其の地方に残つて居るものを掘出して、金持が骨董を弄ぶやうにそれを自分の書斎なり座敷なりに飾つて置くといふやうなことでなく、さういふものを基礎としてその地方の民衆一般の自信と活動力とを与へて行くといふことを考へねばならぬ。
 従つてその地方に於ける名所旧蹟といふものも今日までは他所から見に来る者に見せて置けばいゝ、見せるのに適当な施設をすればいゝといふ考へ方であつたのでありますが、将来は地方の文化運動と致しましては、其の地方の名所旧蹟は其の地方の誇りとして、其の地方の人々の手に依つて最も美しくさうして最も品位の高いものにして行かなければならぬと思ひます。それには其の地方の人達が十分名所旧
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