蹟の意義をはつきり知つて、其の地方の人ならば誰でもその名所旧蹟に他の地方の者を案内出来るといふ知識と準備、これが先づ必要であります。
次に其の名所旧蹟にあるもの悉くがその地方の名折れになるやうなものであつてはならない。例へば看板一つにも其の地方に於ける美しい人情と芸術的な感性といふものが十分発揮されて居なければならぬ。唯単に目立つ看板を掲げればいゝといふやうなことでなく、成程斯ういふ看板は他の土地へ行つては見られない看板だ、而も其の看板には其の土地柄の美しさ良さが十分発揮して居る、といふやうな看板が掲げられて居なければならぬ。看板の一例を挙げてもさうでありますが、土産物などでも只今では大都会で造つてそれを各地方に配布して居るといふやうな実情が見られるのでありますが、これなどもその土地にとつては大きな恥辱だと思ひます。
大量生産の時代ではありますが、少くとも土産物はその土地の人がその土地の人の感覚でその土地の人の技術を以て造つて、他の土地に於ては見られないやうなものを造るとか、さういふことが今日最も健全な文化運動だと思ひます。歌謡曲なども同様で、今日は略々画一的な歌謡曲が出来て居りま
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