日本といふ国は、由来、さういふ奇現象に恵まれた国である。かういふ情勢の中で、われわれが一番もどかしく感じるのは、例の、文学に現はれた「文壇的奇習と方言」の存在である。文学が等しく「世間」を描いて、しかも、そのうちに「世間」を住はせない狭量または潔癖である。自分のうちにないものを、あるかの如く見せる幼稚な手品は、往々にして、非文学的俗臭を放つことがある。訛る標準語と同様世間の識者を茫然自失せしめる所以である。
実際、かういふことをむき[#「むき」に傍点]になつて云ひ出しても、文学の面貌が一新するまでには、五十年はかかるだらう。
底本:「岸田國士全集23」岩波書店
1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「月水金 創刊号」
1937(昭和12)年4月5日発行
初出:「月水金 創刊号」
1937(昭和12)年4月5日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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