映画アカデミイについて
岸田國士
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この問題を私が最初に提唱したのは一九三六年の秋である。その時は主として、国家が映画や演劇の政治的文化的意義に着眼して、先づ民間では至難とされてゐる現代俳優の本格的養成に乗出してほしいといふ意味のことを述べたのであるが、私のこの希望は、音楽家や美術家を国家が国費をもつて育てようと企図する実例を基礎として生れたものである。
しかし、今日では、問題は一層複雑で、所謂映画国策といふやうな言葉も生れた時代であるから、政府が若し、かゝる事業に永久且つ根本的な企画を求めるとすれば、それは単なる俳優だけの問題ではなく、一般技術的な研究、人的要素の整備、製作機構の確立、配給方法の考慮等が、みな関連した問題として取りあげられるであらう。
かゝる制度の具体案については、私はまだなんら意見を述べる資格はない。考へてみる興味は十分あるのであるが、今生憎その時間もなく、調査も資料蒐集も困難な事情にあるので、ほんの責ふさぎに過ぎぬ一個の思ひ
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