なくつたつていゝわ。おどかされたから怒つてるのよ。
男乙 さうか。まあ、どつちでもいゝや、来てくれさへしたら……。明り、このまゝにしとかうか。
女 明りのことなんか気にしないだつていゝわよ。
男乙 …………。
女 まだ怒つてるのよ。もつと御機嫌を取らなくつちや駄目よ。
男乙 さうか、失敬、失敬……。
女 (笑ひ出し)どら、どんな拳銃だか、見せて御覧なさい。
男乙 何処へ置いたつけ……。あゝそこだ、テーブルの上だ。
女 (拳銃を取り上げ、男をねらひ)これが、あんな音を出すの。撃つてもいゝ?
男乙 危い。また、マネージヤーが飛んで来ら。
女 (拳銃をテーブルの上に置き)あんた、うちの宿六さん、どう思つて?
男乙 なかなか肥つてゝ、立派ぢやないか。
女 それだけ?
男乙 いゝステツキを持つてるね。
女 それから?
男乙 毛深い質だね。胸なんか毛だらけだらう。
女 余計なこと云つてらあ。かういふ風ぢや、あんたと会つても駄目ね。しんみりした話なんか出来やしないわ。
男乙 君がわるいんだよ。初めから調子を外すんだもの。
女 あ、さうさう、いゝこ
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