し、大好きですの。
貢 芝居も、長く観ないなあ。
牧子 (茶を薦めながら)より江さんに案内して頂いて、何時か行かうぢやありませんか。
貢 お前がさういふ気を起してくれればありがたい。高尾さんは、われわれの生活に、何か非常に尊い――例へば光りのやうなものを与へに来て下すつたんだね。失礼ですが、御主人は何処かへお勤めにでも……。
牧子 それが、今、お一人なんですつて……。お母さんと御一緒は御一緒なんだけれど……。
貢 へえ、さうですか。
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長い沈黙。
[#ここで字下げ終わり]
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牧子 より江さんがね、一度、温室を見たいつておつしやるの。兄さま、あとで御案内してね。
貢 ああ、いいとも……。今、あんまり花は咲いてませんよ。ぢや、暗くならないうち、一廻りして来ませうか。
より江 でも、お疲れになつてやしませんかしら……。今日に限りませんわ。
貢 ちつとも疲れてなんかゐません。(起ち上る)
牧子 (制して)まあ、お茶を召上つてからになすつたら……。そんなに広くもないんですから……。
貢 (腰をおろし)それ
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