子 事件が起つてるぢやありませんか。
貢 こつちにもさ。――ぢつと待つてれば、何かやつて来さうな気がするんだ。お前、そんな気がしないかい。
牧子 しますわ。
貢 ね、するだらう。変なもんだね。こんなものかねえ。
牧子 ……。
貢 今夜、一晩、起きててみようか。ここに、かうしてて見ようか。何かしら、あるよ、たしかに……。
牧子 いやですよ、そんなことなすつちや……。
貢 兎に角、これは大したことに違ひないよ。四つの魂が、此の月の光の中で、ダンス・マカアブルを踊るかもしれないよ。おれは、それが見たいね。一寸でもいいから見たいね。
牧子 なんのことですの、それは……。
貢 静かに眠ればいいさ。(間)さもなければ、大きな声で歌がうたへるか。(間)どつちもむつかしさうだね。それぢや、どうしよう。(間)かうしてるよりしかたがないぢやないか――かうして、ぢつとしてゐるより……。(椅子の背に頭をもたせかける)
牧子 (静かに涙をふく)
[#ここで字下げ終わり]
[#地から5字上げ]――幕――
底本:「岸田國士全集2」岩波書店
1990(平成2)年2月8日発行
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