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西原 別に急がないんだから、よう御座んす。ゆつくり探すことにしませう。
牧子 ほんとに済みませんでした。(入口の方を振り返り)さあ、どうぞ……。かまはないぢやありませんか、そんなこと……。いやな方ね。
より江 (ためらひながらはひつて来る)あら、お兄さまは……。
牧子 何処へ行つたんでせう。裏ですわ。一寸呼んで来ますから、どうぞ、御ゆつくり……(かう云つて出て行く)
西原 もう少し早いか遅いかするとよかつたですね。
より江 あたくしがでせう。
西原 僕達がですよ……。
より江 おんなじですわ、それぢや……。
西原 お母さんはまだお若いですね。
より江 あたくしがお婆さんだからですわ。
西原 さうお取りになつちや困りますよ。あなたは実に鋭敏だ。どうです、あなたは芝居をやつて見る気はありませんか。
より江 どういふお芝居ですの。
西原 労働者に見せる芝居です。労働者とは限りませんが、つまり、面白い脚本を、頭のいい素人が、熱心にやつて、大勢に、安く見せる芝居です。
より江 あたくしに出来ますかしら……。
西原 出来
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