かたがた一緒に行つてもいいね。
貢 それや、それでもいいが……(独言のやうに)家を空つぽにするわけにや、いかんし、おれがいきなり、より江さんの家へ行くのは、初めてなんだから、一寸、工合がわるいしと……。
牧子 そんなこと、かまひませんけれど、とても、わかりにくい家ですから……。
西原 ぢや、僕が牧子さんについて行かう。
貢 ああ、さうしたまへ。それがいい。
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(貢は、西原と牧子とを送り出してから、やがて、その姿を、硝子戸の向うに現す。しばらく、立つたまま、ぢつと一点を見つめてゐる。晴れやかな微笑。それから、上着を脱ぐ。煙草に火をつける。その煙を、空に向つて、大きく吹く。煙草を喫ひ終ると、温室の中から、鉢を二つづつ運び出して、花壇に並べはじめる。長い間。
此の時、より江の姿が、また硝子戸の向うに現れる。貢を見つけて、その方に近づいて行く。二人は立話をする。より江の快活な笑ひ声。貢は、また仕事にかかる。より江は、それを見てゐる。そのうちに、彼女も、手伝ひはじめる。仕事の句切がつくと、二人は、応接間にはひつて来る)
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