岡田※[#「穀」の「禾」に代えて「釆」]君の個展
岸田國士
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(例)岡田※[#「穀」の「禾」に代えて「釆」]
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私が巴里で岡田君を識つたのは、欧洲大戦の終つた一九一九年の初めでありました。同君は既に私より早く巴里に来てゐて、いろいろ巴里の生活に関する知識を与へてくれ、その上、窮乏のどん底にありながら、仕事に魂を打ち込んでゐる有様が、私をまた、絶えず刺激し鞭韃したことも事実であります。
岡田君は、絵について全くの素人である私に、自分の抱負と、既に歩みつゝある道について語ること屡々でありましたが、私の理解したところでは、彼は、和製の西洋画は描きたくない。つまり、日本人臭さで珍らしがられたり、西洋人の模倣で人目を惹いたりすることは、そんなに困難ではないと思ふ。自分は、一旦生活から西洋人になりきつて、西洋人でなければ描けぬ油絵といふものを描いてみようと思ふ。さうすることによつて、油絵の本質にまで踏み込んで行かな
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