制約が作者の想像と感覚を弾ませつつ生じるので、作品に一定の色調《トオン》と、生命の躍動を感ぜしめるものである。
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ここで、私は仏蘭西の哲学者アランの、詩と雄弁並に散文についての数句を引用させてもらひたい。
「律動《リズム》が自らの不変のいはば機械的な歩みをあくまで肯定しつつ、しかもその事物の在り方に従つて表現し得た時には、あだかも不変の自然がわれわれの自由意志を肯定せる時の如く、その一致から宗教的な偉大さをもつ効果が生じて来る。これこそ詩の本格的秘訣である。」
「脚韻(詩の)は意味に屈従すべきでなく、また意味は脚韻に屈従すべきでないことを知るのである。しかも美しい脚韻と美しい意味との応和が喜びを与へる。反対に苦労のあとが感じられるか、又は恩恵を請ひ求めるやうなものは、すべて醜悪である。」
「雄弁の特色は時間の法則の下に思考するといふことである。ここに於ては、一つの発展は他の発展を消して行くことを忘れてはならない。演説は聴官によつて幻覚されるものだからである。」
「演説的語句の構造は方向を含められてをり、誘ひゆくものであるに対し、散文の構造は注意力を分散させ、拡
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