的補助が与へられるくらゐのものであつた。
ところで、「演劇」の側から「政治」といふものをみると、これはまた常に巨大な圧力であり、その一顰一笑に神経を尖らし、遂には、被害妄想の症状を呈するに至るのであつて、かくの如きは正に、演劇自ら演劇を滅すものである。しかしながら、今日までの実情がこの通りであるとすれば、「演劇」に関係するものの立場から、「政治」に対して何かを求め、演劇自体の発展のために、「政治」の理想を説くといふことは、ややもすれば、陳情の類となり、第三者からは、我田引水のそしりを免れ得ないであらう。なぜなら、演劇について云へることは、多かれ少かれ、その他の芸術全体についても云へることであり、なほ観方によつては、文化機構の全般について、例へば、教育とか宗教とか、出版とか、保健衛生とか、眼に見える或は見えざる現代の風俗とか、悉く、演劇と同様、根本に於て、「かくあるべき政治」との遊離を感ぜしめざるはないのである。そのなかで、演劇のみが特に不遇をならし、しかもほかのことはどうでもいいといふ風な調子で「政治」に呼びかけ、何か優先的に特権を獲ようとしてゐるかの如く見えるからである。
政治全
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