演芸欄 其他
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)与太《よた》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)つら/\
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どうも困つた役目を引受けたものです。今週は新聞を二種類余計取つて、演芸欄、文芸欄に目を通し続け、何か変つた問題はないか、何か週評の種はないかと、丸ではたの見る目も気の毒なくらゐ心を砕いたのですが、どうしてもこれはと思ふ題目が見つからない。
誰か芝居の道に明るい知人にでも会つたらと、さう気がついて見ても、此の三四日、毎日食塩注射をするやうな重態の老母を、看護婦や年の行かない弟妹に預て、のらくら出歩くこともならず、実に進退谷つてしまひました。
そこへもつて来て、S君から、「期日を忘れるな」といふ脅迫状が舞込む。人間、これくらゐ不幸なことはありません。
前回に、「その序言」とやらで、口幅つたいことを云ひましたが、かうなると、えゝい、芝居なんかどうにでもなれ、といふ気が起る。
そこで、つら/\考へて見ると、新聞の演芸欄ほど頼りにならないものはありません。
第一、色々なことが書いてあつてもそれ
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