る不自由に安らかさを与へることが先づ第一に必要である。

       三

 物がうまく行き渡つて、不自由の中にも人々の心が安らかであれば、列をつくらずにすむ、しかし、物を売る時間とやり方とで、どうしても列をつくるやうになる場合もあるから、これについては商店の側の熱心と親切な協力がなければならない。
 品物の少いときであるから、一定の時間に処理を終つてしまふことは、商店としても面倒はないかも知れない。しかし、もうちよつとのところの面倒を我慢して、時間的にもつとゆとりのあるやり方を考へて、商店としても、列をつくることを止めるために、熱心に協力して欲しいと思ふ。

       四

 列をつくることを止めるには、単に物の動きが円滑に行くとか、売り手買ひ手の個人個人として心がけるといふ外に、さらに、列をつくらなくても済むやうな一つの仕組を考へる必要がある。たとへば町会では、町内の食生活は町内の手で解決するといふ意気ごみで、町内の智慧をあつめて、そういふ仕組を考へてみたらどうであらうか。
 その一つの思ひつきとして、『町内食生活委員会』といふやうなものが考へられる。この委員会は、町会役員、
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