をどういふ風なものに作り上げようといふ意図を示す代りに、かういふ風にもできる、かういふ風にもできると、それからそれへ、いろいろなプランとそれに必要な素材料とを丹念に見せてくれたと云へるでせう。
一方から云へば、それは応接に遑《いとま》なき有様でしたが、また一方から云へば、世の新しがり屋に対する皮肉な警告ともなりました。
なんとなれば小山内氏は、かうして、若き日本の新劇を連れて、一通り世界見学をして廻る傍、自分では、かの「どん底」の演出に於ける如き、コピイを脱した一個の古典的作品を作り上げてゐるからです。
小山内氏は、恐らく、これから自分の仕事に一つの新しい出発点を与へようとしてゐたのではないでせうか。
築地小劇場の将来は、小山内氏を失つて、不安を増したやうにも考へられますが、土方氏も明言してをられる通り、小山内氏一個の仕事は、きつと、有為な後継者たちによつて輝かしい完成を見るでありませうし、こゝで私の憶測を許していたゞけるなら、築地小劇場は、それ自身、一層速かに、単色的な特質を発揮するに至るでせう。大に期待すべきであります。
劇作家としての小山内氏について、私は何も云ふ資格は
前へ
次へ
全4ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング