偉大なる近代劇場人
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)遑《いとま》なき
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小山内薫氏の業蹟について、最も理解あり、同時に、最も詳細な批評を下し得る人は、他に多くあるだらうと思ひます。それは、凡そ今日、演劇殊に新劇方面で仕事をしつゝある人々の大部は、何等かの意味で、同氏と親しい交渉をもつて居るからです。
私は、不幸にして、同じ劇壇に身を置いてからも同氏とは最も遠い立場に居た関係上、その赫々たる名声を通じて、氏一流の眼まぐるしい活動の一場を窺ひ得たのみで、こゝで語るべき材料の多くを持ちません。
しかしながら、ひそかに知つて居たことは、氏が飽くまでも、日本に前例のない近代劇場人としての意義ある存在を示し、之によつて、所謂新劇の組織ある基礎を最も困難な地盤の上に築き得た第一の功労者であつたといふことです。
それだけではありません。氏はその基礎の上に、何かを残して行きました。これは、いろいろ見方もあるでせうが、私は、一面、それが未完成なものであると同時に、非常に豊富な、或ひは、非常に雑多なものであるやうな気がします。
小山内氏は、日本の新劇
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