ば、私などは第一に顔を赤らめなければならぬが、これは、決して、軽蔑などゝいふ大それた量見からではなく、寧ろ、怠慢といふぐらゐの罪で、強ひて遁辞を設ければ、とかく親類へは無沙汰がちになるといふ不心得に似たものである。
今月の「文芸」にのつた三枝博音氏の「文学と技術文化」といふ論文はまた示唆に富んだもので、日本研究の重要な資料となり得るものだと思ふ。私もたまたま、最近、西洋の言葉で、「文化」の意味を考へ直してみる機会があり、日本人が文化々々といふのは、どこか身についてゐないところがありさうに思はれだしたので、これを更に、フランス人がドイツ文化を指して特に kultur といふドイツ語をそのまゝ使つてゐる例を思ひだし、国境を接する民族の間に於いてさへ、文化自体の概念のうちにどこか相容れぬ、反撥し合ふものがあることを今更ながら注意すべきであると考へた。
従つて、一応、ヨーロッパ的教養と云つても、それは、甚だ漠然とした意味に於ける西欧的文化の影響を指すのであつて、厳密に云へば、その根本に於いて、例へば、ドイツ、フランス、イギリスといふ風に、それぞれの文化的特質を身につけるといふことであるが
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