談した。
「背中の瘤を取つてやれ」一同は声を揃へて云つた。
 背中の瘤が取れた。
 翌朝、日の昇る前に、仕立屋は意気揚々と家に帰つた。その日は日曜である。近所のものが寄つてたかつて「一体どうしたんだ」と尋ねた。仕立屋は昨夜の一件をつゝまず話して聞かせた。
 之を聞いた織物屋――これも佝僂である――額を叩いてよろこんだ。「おれもやつてやる」
 織物屋はケリオンの踊つてゐる場所を尋ね廻つた。やつと、それを見つけて仲間入りをした。
「月曜、火曜、それから水曜、それから木曜」
 そのあとへ「それから金曜」とつけ加へた。
 一同は之に和した。
「いけねえ、こいつは」一人が云つた。
「とてもいけねえ」もう一人が云つた。
「こいつは駄目だ」みんなが声を揃へて云つた。
「罰をくはせろ」誰かゞ云つた。
「どうしてやらう」親玉が諮つた。
「仕立屋の瘤をつけてやれ」一同が一斉に叫んだ。
 織物屋は二つ瘤を背負つて、すごすご家に帰つた。彼は悲嘆のあまり、年の暮に死んでしまつた。

 カルナックの海岸に、「牛のお化け」が出ることは誰でも知つてゐる。カルナックのものはみんな知つてゐる。此のお化けの名はコオレ・ポル
前へ 次へ
全7ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング