に行くさうである。道でそれに出遇つたものは、忽ち潰されてしまふ。

 昔、この附近にケリオンといふ小人の種類が棲んでゐた。山腹に穴を開けたり、石を積んだりして、その中に棲んでゐた。石を積んだ家、それをドルメンといひ、現にそれが残つてゐて、土地の名物になつてゐる。彼等はどんな大きな石でも平気で持ち上げることができたらしい。
 彼等は、月夜だと、牧場の草の上で踊る。歌を唄ひながら踊るのである。
「月曜、火曜、それから水曜」
 手をつないで輪を作り、面白さうに、この文句を繰返す。
「月曜、火曜、それから水曜」
 或る晩のこと、佝僂の仕立屋が、仕事の帰り路に、此の歌を聞きつけて、踊りの仲間入りをさせてもらつた。然し、歌の文句が、あんまり単調なので閉口した。それで、
「月曜、火曜、それから水曜……」と来たときに、
「それから木曜」と続けて見た。
「おや」一同は顔を見合はせた。
「わるくはねえ」と、親玉らしいのが云つた。そこで、みんなが、今度は、
「月曜、火曜、それから水曜、それから木曜」とやり出した。
「なるほど、こいつはいゝや」と、一人が云つた「褒美をやらうぢやねえか」
「何をやらう」親玉が相
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