評家、殊にフランスのアカデミックな批評家からは、可なりの嘲笑を以つて迎へられたのでした。
どういふ点が気に入らなかつたかといふと、「リヤ王」に属する悲劇、「リヤ王」を一つのタイプとする悲劇に対する趣味の相違からです。ファゲによれば「リヤ王」はシェイクスピアの中の駄作だ、なるほど、ところどころいゝところもあるが、要するに一個のメロドラマたるに過ぎない、この作者は、一方で、世界中の誰も真似の出来ないやうな物を書いてはゐるが、「リヤ王」だけは誰にでも書ける、俺にでも書けると云はんばかりな顔をしてゐます。
それから二十世紀のフランスの新劇運動では――既に御承知と思ひますが、例へば、〔Ge'mier〕 といふ役者は、「じやじや馬馴らし」「ヴェニスの商人」等をやつてをり、例のヴィユー・コロンビエのコポオは、「冬の夜話」や「お気に召すまゝ」等をやつてゐます。この二人はフランスの最近演劇の中心人物でありますが、二人とも大のシェイクスピア党であります。
次ぎに、注意すべきは、かういふ演劇の実際運動に携はつてゐる人達ばかりでなく、文学者間にも、以前にもまさるシェイクスピア熱が勃興してゐることです。ま
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