に相互的な関係を生じ、ラシーヌ中の力強い、生気に満ちた場面を読むと、これはまるでシェイクスピアのやうだと感心し、それからまた、シェイクスピア中の非常に純粋なリリシズムを発見すると、あゝ、これはまるでラシーヌのやうだと感心したのでありました。彼れはかういふ風に、二十歳から二十六歳までの間に最も多くシェイクスピアの影響を受け、シェイクスピア風の戯曲をも書いた。殊にイタリーを舞台にした彼の作品には、シェイクスピアの戯曲から直接何らかの暗示を受けたと思はれるものがあります。例へば、ミュッセの「マリアンヌの気紛れ」といふ脚本がありますが、これはシェイクスピアの「ヴェロナの二紳士」と非常に類似してゐる。それからまたハムレットは、ミュッセのローレンスといふ人物と実によく似てゐるのです。
それから降つては、Dumas fils――伜のデューマ――「椿姫」を書いたデューマ――がまた「ハムレット」の翻案をした。この翻案を、フランスの当時の第一の悲劇役者 Mounet Sully が、四回までも上演して、一回毎にますます立派な演技を見せたといふ記録があります。また当時、〔Franc,ois Hugo〕 と
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