ジヤック・ルウシェ君は、主として舞台装置の芸術的革新を唱導した。此の「子供の謝肉祭」によつて、極く僅かの様式が、最も単純な外貌に如何に美を添へ得るかを人々は知つたのである。」
と、彼は、此の戯曲の跋文に述べてゐる。彼は、なほ、その役々の出来映えについて、出演俳優の悉くに感謝の意を表した後、再び此の戯曲について自ら語つてゐる。曰く、
「此の戯曲が――しかも何等企むところなき此の戯曲が受けたかくも熱烈な、また意外にもかく懇篤なる世評を想ふとき、わたくしは、真を求むる心が常にある反響を呼ぶといふ一事を信じないわけにいかない。わたくしは真実を写す作品を書いた。公衆はわたくしがその中に籠めた大なる感動の叫びを聞いたのだ。しかも、わたくしは、その叫びの、あまりに高からんことを恐れたのである。凡そ、芸術の効果は、控え目といふことにある。わたくしは、人生を包まず露はすところの演劇を愛するが、その中で、作者がその思想を絶叫する演劇を好まない……云々」
作者が、自著が、自ら何を云はうと、それを言葉通り享け容れることは危険であるが、以上の文字をここに抜いた理由は、これだけの中に、戯曲家ブウエリエの面目が
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