クロムランクとベルナアルに就いて
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)沈黙派《エコオル・ド・シランス》

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(例)屡※[#二の字点、1−2−22]
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 欧洲大戦後、即ち千九百二十年から二十三年にかけて、仏蘭西の劇壇は空前の開花期を現出し、その間に、有為な新作家が相次いで「問題になる作品」を発表した。
 クロムランクの「堂々たるコキュ」と、ジャン・ジャック・ベルナアルの「マルチイヌ」とは、サルマンの「幻の魚」などと共に、当時の批評壇を賑はしたものである。
 ところが、今日、これを読み返してみると、「堂々たるコキュ」の方は相変らず面白いが、「マルチイヌ」の方はどうも感心できないといふ、甚だ残念な結果を発見して、訳者たる私は、しばらく途方に暮れた。感心できないものを訳すのは実際辛いものである。殊に翻訳といふ仕事を、幾分「楽しみ」にやつてゐるものにとつては!
 なぜかういふものを訳す気になつたか?
 ジャン・ジャック・ベル
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