アンリ・ルネ・ルノルマンについて
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)感情昂揚《エグザルタシヨン》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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 仏蘭西の現代劇を通じて、「昨日の演劇」の余影と、「明日の演劇」の曙光とを、はつきり見分けることができるとすれば、前者は、観察と解剖の上に立つ写実的心理劇、並に、論議と思索とを基調とする問題劇であり、後者は、直感と感情昂揚《エグザルタシヨン》、綜合《サンテチザシヨン》と暗示に根ざす象徴的心理劇乃至諷刺劇である。

 此の二つの流れは、それぞれ出発点を異にしてゐることは云ふまでもないが、前者が、後者の上に、何等の影響を与へてゐないといふ見方は誤りである。
 いろいろの意味に於て、「今日の演劇」は、写実よりの離脱に向ひつつあると同時に、象徴的手法の舞台的完成時代であると云へる。そして、「舞台的」と云ふ以上、写実時代が立派に完成した「劇的文体」から、少くとも有力な啓示を享けてゐる
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