ことは明かである。「心理的飛躍に伴ふ言葉の暗示的効果」――これは、戯曲の存する限り、総べての劇作家が心血を注ぐべき一点である。様式の如何に拘らず、ラシイヌ、モリエールよりマリヴォオ、ボオマルシェを経てミュッセに至り、最近、ベック、ロスタン、ポルト・リシュを生むに至つた仏蘭西戯曲の本質的価値が、今また更に、第五期の頂点を占むべき作家によつて示されることは、恐らく遠い未来ではあるまい。
現代の仏蘭西劇は――何時の時代に於てもさうであつた如く――外国の傑れた作家から多くの好ましい影響を受けてゐる。殊に、注意すべきは、それが、所謂近代の生んだ巨匠に限られてゐないと云ふ事である。
希臘劇の復活、シェイクスピイヤの新研究は、今日の若い仏蘭西劇壇に於て見のがすことの出来ない現象である。
浪漫派の名作家アルフレッド・ド・ミュッセの名が、新しい光彩と力をもつて甦りつゝあることを忘れてはならない。ミュッセは、最も真摯なるシェイクスピイヤ党であつた。
イプセンとマアテルランク、此の近代劇の二明星は、固より此の運動から除外することはできない。
かういふ憧憬と探究の渦巻から、「明日の演劇」が生まれ
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