ラヂオ・ドラマ選者の言葉
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)愬《うつた》へる
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ラヂオ文学といふ新しい様式について、私は常に興味をもち、なにか原理的なものを発見しようと心掛けてゐるのだが、放送局との関係も、別にそのために特殊な便宜を与へられてゐるわけではないから、なかなか思ふやうに研究もできないでゐる。
今日まで、ラヂオ・ドラマと称せられてゐる一種の形式も、自分だけの頭では、いろいろな空想が結びついてゐるが、それを実際に試みてみる機会さへ容易に得られないのである。
私はラヂオ小説乃至ラヂオ物語といふやうなものも考へてゐる。
ラヂオ風景とは、どこから生れて来た言葉か知らぬが、要するにかういふ名称は、文学の様式的分類から云へば、甚だ根拠のないもののやうに思はれる。単に「スケツチ」風のものだとすれば、創作として別個の扱ひを受ける必要もなく、小説かドラマかの部類に組入れて差支ないやうに思ふ。小説とかドラマとかいふ概念を近代風に解釈すればそれでいいのである。現に今度の応募作品中、はつきりその特殊性を示したものは一つもない。小説でもドラマでも
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