入る必要はない。
小森 話が後先になつたんだ。
阿部 先に、さういへばよかつたんだ。
多田 そんなに怒るなら、帰るよ。冗談ぢやない。自分を知れ、自分を……。
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多田すごすご部屋を出る。
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小森 さう、まあ、腹を立てるなよ。あいつも親切でいつて来たんだ。しかし、人間は感情の動物だ。あの切出し方は、たしかに不味かつた。だからさ、おれの方の話を聴け。男らしく、うんといへ。
阿部 おれたちの話は、同じ親切でも、君の感情を尊重してかゝつてゐる。悪いことはいはない。うんといへ。
彼 いやだ。
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長い沈黙。
彼女は、テーブルの上を片づけ始める。
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小森 君には、おれたちの真心が通じないのか。
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彼女は、食器を運んで来る。
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阿部 君たち二人によろこんで貰へると思つて来たんだぜ。
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