あの日あの人
――巴里劇壇回顧――
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)身体《からだ》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぐづ/\

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔C,a viendra〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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 一九二二年の暮れ、スタニスラウスキイの率ゐるモスコオ芸術座の一行が巴里を訪れた。
 その開演の前夜シャン・ゼリゼエ劇場主、エベルトオは盛大な歓迎会を同劇場内に催して、一行を巴里の劇壇に紹介した。
 其の夜の光景は、私の終生忘れ難きものゝ一つである。スタニスラウスキイを中心に、チエホフ夫人、カチヤロフ、モスコオフィン等の名優を始め、一座の俳優が舞台の中央に居並び、右手には、エベルトオと共に、自由劇場の創始者、老アントワアヌが控えてゐる。左手に一人、前かゞみに、両手を組み合せて立つたのが、ヴィユウ・コロンビエ座の首脳、ジヤック・コポオであつた。参会者は見物
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