ですか。想像はいけません。はつきりしたことだけ云つてみて下さい。それでないと、正確な判断が下せませんから……。
葉絵子 でも、あたくしたち、若い娘の考へることつて云へば、半分以上、想像みたいなもんですわ。ぢや、それはよして、事実だけ申上げてみますわ。そのお友達のお父さまとお母さまとが、その男の方について、全然反対な意見をもつていらつしやるんですの。お父さまの方は、かうおつしやるんです。――あの方は、お前に対して好意以上のものをもつてゐるやうだが、性格と云ひ、才能といひ、お前の未来を托するに足らない人物だ……。
大隈 へえ、才能が乏しいつて云ふんですか。
葉絵子 まあ、さうですわ。物事の表面しか見えない……。
大隈 それで、お母さんの方は、どういふんです。
葉絵子 母の方は……いえ、お母さまの方は、――その男の方の人物については申分がない。しかし、あの方は、たゞ、社交上の礼儀を知つてゐるだけで、決して、あんたを特別な眼でみてゐるわけぢやない。愛されてゐると思つたら大変な間違ひだ。
大隈 あなたは、お父さんとお母さんの意見をあべこべにおつしやつてるんぢやありませんか。
葉絵子
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