に伺ひたいと思つてゐましたの。
大隈  あなたのお友達のことで、僕に相談なさることつていふと、一体、どんなことでせう。僕に関係したことですか、あなたに関係したことですか。
葉絵子  さあ、それは、あなたの御意見次第で、あたくしたちに関係のある問題になるかも知れませんけれど、今のところ全く第三者としてお話をするんですわ。
大隈  僕は、どうかすると、自分自身のことでも、非常に冷静に考へる習慣がついてゐます。科学者の長所も欠点もこゝにあるわけです。さ、お話しなさい。
葉絵子  そのお友達といふのは、あたくしと同《おな》い年《どし》ですけれど、若し結婚するとしたら、その結婚の相手は、自分で選ぶつもりでゐたんです。ところが、家へ遊びに来る若い男の方のうちで、これならと思ふ方が一人あるんですの。むろん、この人でなければならないつていふほどの気特にはなつてゐませんのよ。
大隈  そこが少し暖昧だが、まあ、先を云つて御覧なさい。
葉絵子  その男の方は、大変慎み深い方で、まださういふやうなことについては、なんにも口に出しておつしやらないんですけれど、お友達の想像では……。
大隈  待つて下さい。想像
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