『同志の人々』
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)劇《ドラマ》
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僕は近頃、芝居はどこが面白いかといふ問題について頭を捻つてゐる。
少しそれがわかりかけたやうな気がする。そこへ、畏友山本有三氏から近著戯曲集『同志の人々』の恵贈に預つた。で、早速、そのうちの或るものを再読して見た。
山本有三氏には甚だ失礼ではあるが、僕の戯曲論の説明に、同氏の作品を一例として拝借することにする。それは、同氏の第一戯曲集たる『嬰児殺し』中に収められてある諸作から、今度の『同志の人々』中に収められてある諸作へと、或る著しい進化が認められ、此の進化が、僕の戯曲論を裏附ける為めに、極めて便利な性質をもつたものであるからである。
作品の発表順序について、僕はしつかりした記憶はないが、第一戯曲集の諸作は大部分、第二戯曲集の諸作よりも前期に属するものであることは疑ひない。
一口に云へば、前期の諸作は、主題として所謂「劇的境遇」が選ばれてをり、後期の諸作は、少くとも表面的に「波瀾の少い場面」が選ばれてゐる。『同志の人々』と『指蔓縁起』は別としても、『海彦山彦』『本尊
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