だ片腹痛い仕業であるが、もともと、雑誌発刊の動機が、前に述べた如く、多分に個人本位であり、私自身の言論機関をもつと同時に私の信頼する先輩友人諸氏に、私が読者と共にきかうとするところをきき得る一つの場所を作つたに過ぎないのであるから、これだけは大目に見ていたゞきたい。
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次に、この雑誌は、研究に重きを置くつもりである。研究に片手落は禁物である。自然主義の研究は浪曼主義研究の上に築かれねばならぬ如く、ドイツ流演劇学の研究は、古典作家の研究から出発すべきである。或はまた、クレイグの美学は、ワグネルの理論を経なければ理解し難く、更に遡つて、プワロオの詩学《アアルポエチツク》と対立さすべきである。今日までわが国の新劇研究は、多く、外国の作品紹介と演出記録以外に出なかつた観がある。これもやはり手落である。何故に劇場組織を閑却したか。何故に見物の欲求を問題にしなかつたか。殊に、何ゆゑに、国情と民族性に触れなかつたか。そして、殊に殊に、何故に俳優を除外したか、何より大切な俳優を?
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微々たる一雑誌が
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