、新劇運動の全使命を果し得るとは考へない。ゆゑに私は、たゞこれに一つの新しい方向を与へようといつたのである。処がその実、雑誌そのものにはそんな力すらないのである。たゞ、私の希ふところは、この雑誌の忠実な読者諸君が、最も広き意味におけるわが国新劇運動の指導者たり得る日が、何時か来るであらうといふことである。
「悲劇喜劇」は、最初私の独力で出す計画であつたが、二三の親しい友人が献身的にこの仕事をたすけてくれ、発行事務に関しては、第一書房が全責任を負つてくれることになつたから、こんな心強いことはない。冗費をはぶくため、小売店に出さず、直接購読といふ制度にした。その結果、体裁内容とも、定価五十銭にしては非常に安いものになる筈である。その代り、多く売る方針を取らず、確実に読者をある数だけ得ればいゝことにする。九月廿五日に十月創刊号が出る。成るべく早く申し込んでほしい。
底本:「岸田國士全集21」岩波書店
1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「東京日日新聞」
1928(昭和3)年8月21、23日
初出:「東京日日新聞」
1928(昭和3)年8月21、23日
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