や音譜やが何頁かを占めることもあるだらう。それを以て直ちに編輯者の気まぐれと誤解してもらつては困る。尤も気まぐれなら気まぐれで、雑誌の特色にはなると思ふが。
といつて、わざわざ、色彩の不鮮明な趣味雑誌式編輯はしないつもりである。題名の、「悲劇喜劇」はその点考へないやうで実は考へた名義で、ある人は「いひにくい」と辞し、ある人は「字の形が面白くない」と評してゐるが、私は、それらの批評を一応受け容れた上で、なほ且捨て難い飄々たる味をこの四字のうちに見出だしてゐるのである。
直接そのことゝ関係はないが、この雑誌の創作欄は、「佳いものがあつたら載せる」主義である。「名のある作家にたのんで書いてもらふ」主義でなく、「懇意なものに頼まれたから載せてやる」主義でもない。私自身の作も、かなり自信があるものしか載せないつもりだし、若い人達は、この雑誌によつて作家的地位を作れるやうにしたいと思つてゐる。
自分の編輯する雑誌に自分の作品を発表するといふことは、なんとなく謹慎を欠いたことのやうに見える。殊に「佳いものでなければ載せない」などゝいつてゐるかたはら、自分の作品だけは、自分で折紙をつけるなどは甚
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