ものを、後者は着古したといふ感じがしないでもない。
「劇作」はたしかに、あるものをマスターし、そこから、更に、一歩を踏み出さうとしてゐる時、戦争がこれをうやむや[#「うやむや」に傍点]にした。それゆえ、外部からみれば、「劇作」は役割を一応果してその仕事に終止符を打つたやうにみえるかも知れない。さう見えればそれはそれでいゝのだが、「劇作」の同人諸兄は、心必ずしも平かでないらしい。それもまたもつともと云はなければならない。
私自身は、元来、「劇作」の創刊に際しては、なにも力を藉してはゐないのである。「劇作」は私の若い友人諸君の手によつて、何時の間にか生れてゐた。編輯などにも、ほとんど口を出したことはない。いゝ出来だと思ふこともあり、つまらぬと思ふこともあつた。いゝ出来だと思ふ時は、たいてい黙つてをり、ひどいと思ふ時は、遠慮なくさう云つたこともあるが、その頃はもう「劇作」は私の手の届かぬところを歩いてゐた。「劇作」の気風なるものは、私などにおかまひなく、「劇作」同人の内輪同士で作りあげたものである。
同人の一人々々は、あれほど才能もあり、人間も面白く、勉強は可なりしてゐるらしいのに、雑誌
前へ
次へ
全4ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング