られ、遂に波動力學として學界に紹介せらるゝに至つた。
この見方に從へば、ボーア流の電子軌道は抹殺せられ、只その階段的跳躍によつて發光する大議論は不變に殘して置くことゝなつた。結局ボーアの想像した臆説は排除して、その基礎的定理を殘すことになつた。この新しき見解によつて、ます/\實驗に符合する論據を得た。これよりやゝ以前にハイセンベルヒ(獨人)が數學的難澁な經路を踏み、同樣なる結果に到達する方法を考へ出したけれども、難易の見地から、波動力學が專ら行はるゝやうになつた。
かくの如く變遷した後、電子とか磁子とかいふものゝ正體が判然したかと讀者は問はるゝであらう。これについてはヂラク(英人)の研究があるけれども、まだ蒙昧な状況にあるといつてよろしい。そも/\吾人が最初に解釋すべくして、まださつぱり手のつかない事柄は、陰電氣と陽電氣の差別である。陰量子は電子に宿し、陽量子は水素原子に宿してゐる。しかして核の方は電子より千八百倍の質量を有てゐる。その理由如何といはるれば、只そんな配合に測定せらるゝといふより他はない。この最も重要なる問題が解決せられざる以上、電氣を論ずるもの、物質を説くものは、暗
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