る。彼らは競漕に勝ったよりも、競漕に勝ったことを語るのを悦んでいるかのごとくであった。
聴いている人も、悦んで聴いてやらなくては選手に済まないと思って、それを助長させる傾向がないでもなかった。
久野は冷たい酒を呑《の》み乾《ほ》しては、その場の光景を冷観しようと骨を折った。がしかし彼もまた、勝利を語るのには酔わなくちゃならぬ人であった。
底本:「日本の文学 78 名作集(二)」中央公論社
1970(昭和45)年8月5日初版発行
初出:「新思潮」
1916(大正5)年6月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:土屋隆
校正:鈴木厚司
2006年11月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全36ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久米 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング