フ人口が久しく停滞的であり、容易には増加を許さぬとしても、教育の改善その他の原因による人民の習慣の変化により結婚数の比率が減少するということもあり得る。しかし、貧困に伴う疾病による小児死亡は減少するであろうから、結婚数の減少は死亡率の減退によって埋め合わされ、そして出生数は減少しながら人口はその適当な水準に維持されるであろう。
従って、人民の習慣におけるかかる変化は、明かに考慮に入れなければならぬ。
この問題に関して樹立し得る最も一般的な法則は、おそらく、結婚に対するいかなる直接的[#「直接的」に傍点]奨励も死亡率の増大を伴わざるを得ない、ということであろう。結婚せんとする自然的傾向はあらゆる国において極めて大であるから、従って、いかなる奨励がなくとも、結婚に適当な余地があればそれは常に充されてしまうであろう。従ってかかる奨励は、全く無用であるか、または結婚の余地のない場合にこれを生み出すかでなければならぬ。そしてその結果は、必然的に、貧困と死亡の増大でなければならない。モンテスキウはその著『ペルシア人の手紙』Lettres persanes において、フランスの過去の戦争において、軍役召集の恐れが、多数の青年を促して、家族を扶養する適当な手段もなくして結婚せしめ、その結果は無数の小児の出生となったが、『かかる小児は今なおフランスで求められており、しかも貧困、飢餓、及び疾病はこれをほろぼした』と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettre cxxii.
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結婚に関する直接的奨励の必然的結果に関するかくも適切な例証を試みたのちに、彼が、その著『法の精神』の中で、ヨオロッパは今日なお人類の増殖に好都合な法律を必要とする状態にある、と書いているのは、全く驚くべきことである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Esprit des Loix, liv. xxiii. c. xxvi.
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ジュウスミルヒもこれと同一の見解を抱いている。すなわち彼は、食物がそれ以上増加し得ない時には結婚数は必然的に停止するという場合を考察し、結婚締結が、死亡により解消した結婚の数で正確に左右される若干の国々を検討していながら、しかも彼は、なお、結婚数に留意するのが政府の主要義務の一つである、と考えている。彼はアウグストスとトラヤヌスの実例を引用し、そして王公や政治家が結婚比率を一対一二〇ないし一二五から、一対八〇ないし九〇の比率にまで高め得たら、これは彼をして真に国民の父たる名に価せしめるものであろう、と考えている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし、彼自身が与えている事例から見て、久しい間かなり人口が稠密であった国においては、死亡こそが結婚に対する一切の奨励の中で最も有力なものであることが、明かにわかるのであるから、かくの如く結婚数を著しく増加する上で成功を収めた王公や政治家は、おそらく、国民の父たるよりは、その破壊者たる名にふさわしいのである。
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1)[#「1)」は縦中横] 〔Sussmilch, Go:ttliche Ordnung, vol. i. c. iv. sect. lxxviii. p. 151.
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年出生の総人口に対する比率は、明かに主として、年々結婚する人間の比率に依存しなければならず、従って大きな人口増加を許さぬ国においては、結婚と同様に、主として死亡に依存しなければならぬ。実際の人口減少が起っていない場合には、出生は常に、死亡によって作られる間隙を充たし、そしてちょうど国の資源の増加が許すだけこれを超過するであろう。ヨオロッパのほとんどあらゆる地方において、時々これを襲った大|疫病《ペスト》や伝染病や戦争の中間期中には、出生が死亡を超過している。しかし死亡率は国と環境を異にするにつれはなはだしく異っているから、出生も同様に異ることが見られるであろう。ただしたいていの国が許し得るところの、死亡以上に出ずる出生の超過の如何《いかん》によって、それが異る程度は同一でなかろうが。
死亡率が約二三分の一であるオランダの三九箇村においては、出生もまた約二三分の一である1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。パリ周辺の一五箇村では、出生は総人口に対し同一の比率にあり、または死亡率がいっそう高いのでもう少し高く、出生は二二・七分の一、死亡も同一である2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。人口が増加しつつあるブランデンブルグの小都市では、死亡率は二九分の一出生は二四[#式(fig45455_01.pn
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