ノは、常に右の疾病特に後者の流行が激しくなるのが、見られている。
軽い神経性熱病や、その他もっと激しい致命的なものが、しばしば流行し、そして時に多数の生命を奪い去る。しかし、従前|蘇格蘭《スコットランド》を襲った疫病《ペスト》の絶滅以後、最も致命的な伝染病は天然痘であり、それは多くの地方では定期的に囘起し、他の地方では不定期的であるが、それも七、八年以上間を置くことは滅多にない。その暴威は、恐るべきものがある、もっともある教区では以前ほど致命的ではないけれども。種痘に対する偏見はなお大きく、そして処置法も小さな密集した家屋では必然的に不十分たらざるを得ず、また病気中見舞に行き合う習慣がなお多くの地方に行われているので、死亡率は高く、貧民の子供が主としてこれにかかるに相違ない、と想像し得よう。西部諸島及びハイランド地方のある教区では、一家の人数が四人半ないし五人から六人半ないし七人に増加している。もしかかる激増が、それに対する適当な備えもなしに生ずるならば、たとえ疾病を生じないとしても、一旦病気が襲来した時にはその荒廃に十倍の力を与えるに違いないことは、明かである。
蘇格蘭《スコットランド》は常に凶作に襲われており、時には恐るべき飢饉にすら襲われている。一六三五年、一六八〇年、一六八八年、十六世紀(訳註)末の数年、一七四〇年、一七五六年、一七六六年、一七七八年、一七八二年及び一七八三年は、いずれも各所で、欠乏の大厄年として指摘されている。一六八〇年には、この原因のために極めて多数の家族が死滅して、ためにこの人口稠密な六|哩《マイル》に亙って人煙を見ざるに至った1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。十六世紀(訳註)末の七年間は、凶年と呼ばれた。モントキュイッタアの教区に関する報告の筆者2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]の言によれば、その近隣の一農場の一六家族のうち一三家族が絶滅し、もう一つの農場では、一六九人のうち、わずかに三家族が(土地保有者も含めて)生き残ったに過ぎなかった。現在百人も住んでいる広大な農場が、全く荒廃に帰してしまって、放羊場に変えられた。この教区の住民は、一般に死亡によって半減し、またあるものの主張によれば四分の一に減少した。一七〇九年に至るまでは多くの農場は荒地となっていた。一七四〇年にはまたも凶作が起り、貧民は死にはしなかったが極度の窮乏に曝された。多くの人はパンを得るために働こうと申し出たが、徒労に終った。頑健な男でさえ一日たっぷり働いて二ペンス貰って大喜びであった。一七八二年と一七八三年にも大きな災厄が生じたが、しかし死者はなかった。この筆者は曰く、『もしこの危機にアメリカ戦争が終熄しなかったならば、もし海軍のために備えられた特に豌豆《えんどう》の有り余る貯蔵が売りに出されなかったならば、我国にはいかなる荒廃と恐怖の光景が展開されたことであろう。』
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1)[#「1)」は縦中横] Parish of Duthil, vol. iv. p. 308.
2)[#「2)」は縦中横] Vol. vi. p. 121.
〔訳註〕これらの『十六世紀』とあるのは、おそらくいずれも『十七世紀』の誤りであろう。
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これと同様な多くの叙述は、『統計報告』の各所に現われているが、欠乏により時々生ずる惨情の性質と程度を示すには以上で十分であろう。
一七八三年にはハイランド地方のある地方に人口減退が起り、そしてこれが、この地方で住民の数がウェブスタ博士の調査以後減少している理由であると云われている。たいていの小農業者は一般に、当然予期される如く、凶作のために絶対的に没落してしまった。ハイランド地方のこの種の人々は、当てにならぬ生計の資を求めて、普通労働者としてロウランド地方に移住せざるを得なかった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。ある教区では、この前の調査の時にも、この凶年時における農業者没落の結果は、彼らの窮迫した状態と、その必然的結果たる一般民の貧困と窮乏の増大の裡に、なお看取し得るところであった。
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1)[#「1)」は縦中横] Parish of Kincardine, County of Ross, vol. viii. p. 505.
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バンフ郡グレインジ教区に関する報告1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]には、一七八三年には緑肥による一切の改良は中止され、農業者は穀物を栽培すること以外には何も考えなかった、とある。借地人は大部分没落した。これより以前には肺病はその後ほどは多くなかった。これは、一七八三年の凶作と粗悪な食物に、並びに一七八二年及び一七八七年の長期の不作に帰して間違いないのであり、――こ
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