m実でありまた決して豊富ではないので、貧民はそれをもって単に極度の貧窮の場合の最後のより所と考えるに過ぎず、安全に依頼することが出来かつあらゆる艱難に際して国法によってその適当な分け前が彼らに与えられるところの資金とは、決して考えていないのである。
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1)[#「1)」は縦中横] 最近議会において、蘇格蘭《スコットランド》の貧民法は、英蘭《イングランド》のそれとは極めて異って解釈され実施されているが、本質的にはそれと異るものではない、と述べられた。しかし、この問題に関する法律がどうあろうとも、実際は一般にここに記した通りである。そして現在の問題に関係があるのは実際の点だけである。(訳註――この註は第三版に現われ、そこでは前半は、『大蔵省のロウズ氏は、貧民の問題に関する最近のパンフレットの中で、この記述を論難している。しかし、この問題に………』となっている。本文の形になったのは第四版からである。)
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その結果として、一般人は、こんな乏しい当てにならぬ救済を乞う必要を避けるために非常な努力をしている。報告の多くには、彼らは疾病や老齢に備えて蓄えをしないことは滅多になく、一般に、教区の救済を受けなければならぬ恐れのあるものの、大きくなった子供や親戚は、普く一家の恥辱と考えられているかかる堕落を出来るなら防止しようと、進んで助力をするのである。
各種教区の報告の筆者はしばしば、極めて強い言葉で英蘭《イングランド》流の貧民税賦課制度を非難し、蘇格蘭《スコットランド》流の救済という方法が決定的に優れていると云っている。工業都市ではあるが貧民が多数いるペイズリに関する報告1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]の中で、筆者はなお英蘭《イングランド》の制度を非難し、そしておそらく行き過ぎの記述をしている。彼は曰く、英蘭《イングランド》ほど多額の貧民救済金はどこでも見られないが、しかも英蘭《イングランド》ほど貧民の多い国はない。そして彼らの状態は、他国の貧民[#「他国の貧民」に傍点]に比較して、真に最も悲惨である[#「真に最も悲惨である」に傍点]、と。
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1)[#「1)」は縦中横] Vol. vii. p. 74.
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ケエラヴェロックに関する報告には1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、貧民はいかに給養せらるべきかという問題に答えて、極めて適切に次の如く述べてある。『窮迫と貧困とはそれを救済するために作られた資金に比例して増大する。慈善の方策は、それを分配すべき必要が生ずるまでは、眼に見えぬようにしておくべきである。蘇格蘭《スコットランド》の地方教区では、一般に、少額の随時の自発的義捐金で十分である。立法は、既に十分あり余る水流を増大するために、干渉する必要はない。最後に、貧民税の創設は啻に不必要なるのみならず有害であるが、けだしそれは、貧民に何らの救済をもたらすことなくして、土地保有者を圧迫する傾向があろうからである。』
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1)[#「1)」は縦中横] Vol. vi. p. 21.
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以上の如きものが大体において蘇格蘭《スコットランド》の牧師の一般的意見であるように思われる。しかしながら若干の例外はある。そして課税制度が時に是認され、その創設が推奨されている。しかしこれは驚くに当らない。これら教区の多くでは未だ実験を経ていない。そして理論上人口原理を完全に知得することもなく、実践上貧民法の弊害を十分知らなければ、この問題を一見したとき、慈善心の有無を問わずにその能力に応じて納附せしめられ、その時々の必要に応じて増減され得べき、課税の提唱ほど、自然に見えるものはないのである。
蘇格蘭《スコットランド》では、通常の場合と同様に、伝染病と伝染性疾患とは主として貧民を襲っている。壊血病はある地方では極度に厄介で頑固である。またある地方では伝染性癩病を起し、その結果は常に恐るべきものであり、しばしば致命的である。ある筆者はこれを人性に対する天罰、悪毒と呼んでいる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。それは一般に、寒い湿潤な環境、乏しい不健康な食物、湿っぽい密集した家屋から生ずる不純な空気、怠惰な習慣、及び清潔に対する不注意に、帰せられている。
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1)[#「1)」は縦中横] Parishes of Forbes and Kearn, County of Aberdeen, vol. xi. p. 189.
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広く拡っているリウマチスや、一般人の間に頻々とある肺病も、著しい程度にこれら諸原因に帰せられている。どこでも特殊の事情により、貧民の境遇が悪化した時
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