Aと書いてある。土地保有者の目的は、自分の土地に出来るだけ多数の漁夫をもつことであり、この事実は農業の改良に対する大きな障害である。彼らの漁撈はその主人のためのものであり、主人は彼らに全く不十分な手間賃を支払うか、または魚を低率で買取るかである。この筆者は曰く、『たいていの地方では、人口増加は利益と考えられているが、これは正当である。しかしながらシェットランドの現状では反対である。農場は細分されている。若者は何らの資財もなく結婚を奨励されている。その結果は貧困と窮迫である。現在これら諸島には、それが適当に養い得る人数の二倍がいると信ぜられている。』
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 1)[#「1)」は縦中横] Vol. x. p. 194.
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 ファイフ郡のアウホテルデランに関する報告の筆者1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]は、労働者の食物は乏しくて不断の苛酷な労働がその体躯に与える結果に抗することが出来ず、そのためその身体は自然の指示する時期以前に衰耗してしまう、と云い、更に附言して曰く、『人口が引続き自発的に、結婚によってかかる辛い境遇に入り込むということは、両性の結合と独立の愛とが、いかに人類天性の原則であるかを示すものである、』と。この言葉の中で、独立の愛というのは子孫の愛と変えた方がおそらく適当であろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] Vol. i. p. 449.
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 ジュラ島は1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、不断の数多くの移住にもかかわらず、絶対的に住民が過剰であるように思われる。時には一つの農場に五六十人もいる。筆者は、かかる住民の大群は、工業やその他の産業が知られていない場所では、地主に対する極めて大きな負荷であり、国家にとり無用のものである、と云っている。
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 1)[#「1)」は縦中横] Vol. xii. p. 317.
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 もう一人の筆者は1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、一七七〇年のアメリカ行大移民と、最近の戦争中の多数の若者の喪失にもかかわらず、人口が急速に増加したことに、驚いている。彼はその適当な原因を挙げるのは困難であると考え、そして、もし人口がこのように増加し続けるならば、ある仕事が人々に見出されぬ限り、この地方はまもなく彼らを養い得なくなるであろう、と述べている。またカランダア教区に関する報告では2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、筆者は、この地の村々や、同様の状態にある他の村々は、裸体の飢に瀕している多数の人民で充ち満ちており、彼らは家とパンを求めて続々と溢れ出ている、と云い、また、ある町または村の人口がその住民の産業を超過するに至る時には、常に、その瞬間からその土地は衰弱しなければならぬ、と云っている。
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 1)[#「1)」は縦中横] Parish of Lochalsh, County of Ross, vol. xi. p. 422.
 2)[#「2)」は縦中横] Vol. xi. p. 574.
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 急速な人口増加の傾向を極めてよく示す一例が、エルジン郡のデュウシル教区1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]の記録簿に表われている。そして、重複の誤りは脱漏の誤りよりもおそらく少いのであるから、これは注意に価するように思われる。年出生の総人口に対する比率は一対一二であり、結婚のそれは一対五五、死亡のそれは同率である。出生の死亡に対する比率は七〇対一五、すなわち四・三分の二対一である。死亡の誤りは脱漏の側にあるように思われるから、吾々は死亡数に関して若干の不正確を想定してよかろうが、しかし総人口の三分の一に上る極めて異常な年出生率はそれほど誤っているとは思えず、そしてこの教区に関する他の事情は、この記述を確証する傾向がある。八三〇の人口のうちわずかに独身者三人に過ぎず、そして一結婚当り七人の子供が生れている。しかもそれにもかかわらず、人口は一七四五年以来大いに減少していると想像されている。従ってかかる過度の人口増加の傾向は、過度の移住の傾向によって惹起されたものであることがわかる。筆者は非常に大きな移住のことを述べており、相当程度の生活愉楽品を享受している全種族が、単なる出来心や、また自己の主人となり自作人となるという空想から、蘇格蘭《スコットランド》各所より近年移住していると述べている。
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 1)[#「1)」は縦中横] Vol. iv. p. 308.
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 明かに移住の習慣により惹起されたかかる異常な出生率は、単にその人民の一部を除去するだけで一国の人口を減少するこ
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