閨vに傍点]大なる程度の欠乏と貧困とが起るであろうということを、注意しなければならぬ。
統計報告を概観すると、蘇格蘭《スコットランド》における下層階級の境遇は、近年著しく改善されてきていることが、明かに看取される。食料品の価格は騰貴したが、しかしほとんど常に労働の価格はそれ以上の比率で騰貴した。そしてたいていの教区においては、一般人の間で肉が以前よりも多く消費され、住居や衣服もよくなり、そして清潔に関する彼らの習慣が決定的に向上している、と云われている。
この改善の一部分は、おそらく、予防的妨げの増加に帰せらるべきであろう。若干の教区では、晩婚の習慣が指摘されており、そしてこの習慣が指摘されていない多くの場所でも、出生や結婚の比率、その他の事情から、それが行われているものと推論して差支えなかろう。エルジン教区に関する報告の筆者は1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、蘇格蘭《スコットランド》における人口減少の一般的原因を列挙するに当って、農場の合併によって結婚が阻害され、またその結果として、あらゆる階級及び種類の働き盛りの若者が移住し、再び帰郷するものはほとんどない事実を語っている。彼が述べているもう一つの結婚阻害の原因は、奢侈であり、彼によれば、少くとも人々は年齢が進むまでこのため結婚しないので、生れる子供は虚弱である。『かくしてあらゆる種類のいかに多くの男子が独身生活を送ることか。またあらゆる階級のいかに多くの女子が結婚せずに終ることか。彼らは今世紀の始めには、または一七四五年のおそきですら、数多い健康な子供達の親となっていたはずのものである、』と。
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1)[#「1)」は縦中横] Vol. v. p. 1.
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より[#「より」に傍点]少い人手しか必要としない牧畜法や改良農法の採用によって、人口がむしろ減少した地方で、こうした結果は主として起ったのである。そして、前世紀の終りまたは今世紀の始め以来の人口の減少が、その各時期における出生率で推算されているのは、特にスイスやフランスについて注意した誤りに陥ったものであり、その結果として人口の相違は実際よりも大きくなったことを、私はほとんど疑わないのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] ある筆者はこの事情に着目し、そして、従前は出生は総人口に対して、現在よりも大きな比率を保っていたように思われる、と述べている。彼は曰う、おそらくより[#「より」に傍点]多くのものが生れたし、またより[#「より」に傍点]大なる死亡率があったのであろう、と。Parish of Montquitter, vol. vi. p. 121.
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この問題について私が種々の報告からして下すべき一般的推論は、結婚が以前よりも晩婚になったということである。しかし、若干の明白な例外もある。工業が導入された教区では、子供が六、七歳になればすぐ職業が得られるので、早婚の習慣が当然に伴生する。そしてこの工業が引続き繁栄し増大する間は、それから生ずる害悪はそれほどは目につかない。もっとも人道の士たるものは、それがそれほど目につかない理由の一つは、かかる職業につく子供の間に生ずる不自然な死亡率によって新家族を容れる余地が作り出されることにあることを、嘆息しつつ告白せざるを得ないのである。
しかしながら、蘇格蘭《スコットランド》の他の地方、特に西部諸島及びハイランド地方の若干部分では、財産の再分により人口は著しく増加し、またおそらく――工業の導入によるものではないが――以前よりも早婚になっているかもしれぬ。ここではそれに伴う貧困は明瞭すぎるほど明瞭である。シェットランドのデルティングに関する報告には1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、人々は非常に早婚であり、また出来るだけ多くの人間をその土地に有って鱈漁をやりたい地主は、早婚を奨励しているが、しかし彼らは一般に借金と大家族に悩んでいる、と書いてある。筆者は更に、以前にはこの地方に地方条令と呼ぶある古法があり、その一つには、何人も自己の自由になる四〇|磅《ポンド》を有たなければ結婚してはならぬ、と定められていた、と云っている。この法律は今は行われていない。これらの法律はメアリ女王またはジェイムズ六世の治世に、蘇格蘭《スコットランド》議会の承諾と確認を受けたと云われている。
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1)[#「1)」は縦中横] Vol. i. p. 385.
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シェットランドのブレッセイ・ビュラ及びクウォルフに関する報告には1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、農場は極めて小さく、また鋤を有つものはほとんどない
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