ヤにおいて、前記の修正を施した死亡以上に出ずる出生の超過によって決定される増加率と、ほとんど一致するであろう。そして前記の修正がある程度不正確であるとしても、――これはありそうなことだが――何らかのかかる不正確から起る誤りは、旧表の基礎となっている仮定、すなわち出生は人口に対し常に同一の比率を保つという仮定から、必然的に生じなければならぬ誤りより、遥かに小なるべき傾向があるということも、更に注意に価することである。
もちろん私は、より[#「より」に傍点]よい資料が見つからぬ場合には、このようにして行われる人口の推算に決して反対しようというつもりはない。しかし現在の場合では、埋葬と洗礼の記録簿が一七八〇年の古きまでも毎年与えられており、そしてこれらの記録簿は、最近の人口実測という確固たる立脚点があるのであるから、一七八〇年以来の人口に対してそれ以前よりも正確な表を与え、同時に、出生のみによる推算は、なかんずく特定期間の人口増加を見るためには、不正確であることを証示する、手段を提供しているのである。大きな国の総人口を見積るに当っては、二、三十万は大したことではない。しかし五年間または十年間の増加率を見積るに当っては、この程度の誤りは全く致命的である。適宜に選んだ五箇年間の増加率について結論を作るに当っては、思うに、問題の期間の人口増加が六三、〇〇〇であるかそれとも二七七、〇〇〇であるか、一一三、〇〇〇[#「一一三、〇〇〇」は底本では「一一五、〇〇〇」]であるか、それとも四五六、〇〇〇であるか、六五九、〇〇〇であるか、それとも四一七、〇〇〇であるかは、本質的差異をなすものであることが、認められるであろう。
この世紀の一七八〇年に先立つ期間に関しては、洗礼及び埋葬の記録簿は各年ごとに報告されていないから同一の修正を施すことは出来ない。そして記録簿が互にある隔たりをもつ別々の年についてしか与えられていない、この期間以前の出生から計算した表には、啻に五箇年を平均した出生の人口に対する比率に変化があるという事情からばかりではなく、またかく選定された箇々の年がかなり正確にかかる平均を表わさないという事情によっても、非常に大きな誤りが生じ得ることは明かである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。『人口摘要』の『緒論2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]』にある洗礼、埋葬、結婚に関する貴重な表をちょっと見ただけでも、箇々の年の出生、死亡、結婚から下された人口に関する推論が、いかにほとんど信頼すべからざるかがわかるであろう。もし例えば吾々が、一八〇〇、一八〇一両年の人口と、次の一八〇二、一八〇三両年の人口を、結婚の人口に対する比率は常に同一と仮定して、この比率から測定するとすれば、初めの二箇年の人口が九百万ならばこれに続く二箇年の人口は千二百万よりはるか以上となることとなり、かくて短期間に、三百万以上、すなわち三分の一以上増加したように見えるであろう。また一八〇〇、一八〇一両年の出生を一八〇三、一八〇四両年に比較して行われる測定の結果も、これと多くは異らないであろう。少くともかかる測定は、三年間に二百六十万の増加を示すであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] 一七六〇年ないし一七七〇年に極めて急速な人口増加のあったことを意味するこの両年の表の数は、これらの原因のいずれかによって、相互に適当な比例を保っていないことを、私は疑わない。おそらく一七七〇年の数が過大に失するのであろう。
2)[#「2)」は縦中横] P. 20.
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読者は出生、死亡、結婚、が総人口に対して小さな比率しかもたず、従って一時的原因から起り得るこれらの何らかの変動は、おそらく、人口総数の同様の変動を伴い得ないことを考えるならば、かかる結果を見ても少しも驚かないであろう。ただ一年間に出生が三分の一増加するということはあり得ようが、それは人口を三分の一増加せしめることはなく、おそらくわずかに十八分の一か十九分の一増加せしめるに過ぎないであろう。
従って、前章において述べた如くに、この世紀の一七八〇年に先立つ時期の、十年おきの出生のみの報告から計算された人口の表は、より[#「より」に傍点]よい資料がないので極めて概略に行った推算であると考え得るに過ぎず、特定の時期の比較上の増加率を知るためにはほとんど全く信をおき得ないものである、ということになる。
一八一〇年の人口を、本章で前述した一八〇〇年の[#「一八〇〇年の」は底本では「一八一〇年の」]修正人口と比較すると、これは、両年の人口実測の差よりも緩慢な増加を示している。そして更に、四七対二九・二分の一という出生の死亡に対する推定比率は実際以上であるよりもむしろ以下であるように思
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